原発を持つ電力会社10社が、一度使ったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を再利用するための費用の積み立てを中止していた問題で、佐賀県や九州電力玄海原発が立地する東松浦郡玄海町の関係者には戸惑いや懸念が広がっている。国や事業者はMOX燃料再処理「断念」を否定するものの再処理の行方は不透明となり、市民団体からは「核燃料サイクルはだめなことばかり」と批判の声が上がった。
 佐賀県は3日の報道を受け、経済産業省に問い合わせるなどの対応に追われた。経産省からは「将来の処理費用に備える積立金や引当金から、使用済燃料再処理機構(青森県)の発足に伴う機構への拠出金に制度移行した」「使用済みMOX燃料の処理は引き続き研究開発に取り組むとした第5次エネルギー基本計画通り」と報道内容を否定する説明があったという。県新エネルギー産業課は「国が主体的に対応されるもの」と静観する考えを示した。
 九電によると、玄海3号機に入れているMOX燃料は32体で、うち16体は2020年に同原発初の使用済みMOX燃料となる。九電の担当者は「国が方針を示すまでは自社で貯蔵管理しなければならない」としながら、敷地内への設置を検討する乾式貯蔵施設での管理は「未定」とした。
 玄海町の脇山伸太郎町長は「国や事業者から何も聞いていない。使用済みMOX燃料も原発敷地内で保管することになるのかもしれない」と懸念を示した。
 「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」の石丸初美代表(67)=佐賀市=は、「(MOX燃料の)再処理工場をつくるには膨大な費用がかかり、電力会社としてはある意味当然。青森の再処理工場もどん詰まり」と指摘、「国は潔く(核燃料サイクル政策を)止める決断を」と訴えた。