トラクターで畑を整備する学生ら=白石町
白石町内に借りた畑で肥料をまく学生たち=白石町
SSJのレクチャー風景。トマトとサツマイモの栽培法を学ぶメンバー=佐賀市本庄町の佐賀大学
自身の夢の実現も目指し、SSJで活動する石田勇以さん=佐賀市本庄町の佐賀大学
被災地支援や新作物の栽培などで活動するSSJのメンバー
 白石町の「白」にかけて白いトウモロコシや白いオクラ作り? 農業ボランティア団体「SSJ」(Seeding Support of Japan)は佐賀大の学生を中心に活動している。被災地を支援したり、新しい作物の栽培に取り組んだり、若いパワーを生かした活動内容をのぞいていみた。

白石町で「白い作物」作り

 SSJは農業をテーマに活動するボランティアグループで、2016年4月に発生した熊本地震後の同年8月、熊本県南阿蘇村で誕生した。
 誕生のきっかけは、代表の石田勇以さん(22)=佐賀市=自身が熊本地震で被災したことだった。石田さんは高校時代から農業を学び、南阿蘇村のイチゴ農家でも2年間アルバイト。地震当時もたまたま現地に居合わせた。知り合いのイチゴ農家の倒壊したビニールハウスを解体し、地割れした農地の修復を手伝った。周囲の大学生ら有志に呼びかけてSSJを発足させ、個人ではどうにもならない周囲の農家の施設撤去・修復作業、土砂のかき出し、野菜の定植作業に取り組んだ。
 このノウハウを生かし、2017年7月、九州北部豪雨の発生後には、大きな被害を受けた福岡県朝倉市へ。農業支援をはじめ仮設住宅への物資供給なども手がけ、行政とも連携して被災地を元気づけた。現在、SSJでは農学部の1年生を中心とする佐賀大生15人をはじめ18人が活動している。
 今年4月からは、メンバーの若い感性を生かし、農業を通じた地域の活性化にも乗り出した。白石町から約15アールの畑を借り、同町内で白トウモロコシと白オクラの栽培を始めた。白い作物は白石町の「白」つながり。今後、白いサツマイモや白いスイカも植える計画だ。
 白石町では来年3月末、道の駅「しろいし」が完成予定。地元独自の加工品などの販売拠点となり、SSJが手がける白い作物も、目玉の一つにと狙う。「今まで誰もやらなかったことをやってみたい。並べる野菜が全て白だったら面白いじゃないですか」と石田さんは言う。
 同大農学部1年の平原はなえさん(19)は「農業を本気で体験することができる。学んだノウハウを将来に生かしたい」と目を輝かせる。学生だからこそ、農業のアドバイスをもらったり、畑の様子を時々見に来てくれたり、地元農家からは「孫のようにかわいがってもらえる」と石田さんは感謝する。地元農家との協力関係を築いていければ、将来、白石地区で就農したいというSSJメンバーも出てくるのではないかと考えている。
 SSJが白石町内で畑を借りるのは3年間。今年1年間は一定面積から得られる収穫量、耕作に必要な経費、販売して得られる収益など経営データを集め、今後に生かしていく。「失敗も成功もあるだろうが、白石を農業で元気にしたい」と石田さんは力を込める。

経営と技術学べる場に-石田勇以さん(SSJ代表)

 「活動を通じて、中途半端な農業をしていると、すぐに採算が取れなくなることも肌で感じた」と石田さんは言う。SSJには大学卒業後、農業を続けたいと思っている人も多く、石田さんは農業の魅力をグループ内で共有し、広く伝えていくためにも豊かな経営感覚を重視している。
 白石のプロジェクトでは、一定面積当たりの収量や販売価格の分析のほか、消費者の反応を直接見ることでリアルな農業経営を学ぼうと計画する。経営感覚と同時に基礎づくりも重視。月に数回勉強会を行い、野菜の特徴や育て方も細かく情報共有している。
 「農業はきつい、汚いというイメージがまだあるが、一面広がる麦畑や茶畑を見たらきっと農業が好きになる」と石田さんは農業の魅力に自信を持ち、経営や技術面の裏付けを身につけることで、マイナスイメージの払しょくを志す。
 石田さんの目標は、季節ごとに旬の作物が実る農場を経営し、見渡す限りの畑の真ん中に宿泊施設を建てること。自身の夢の実現のためにも、SSJで経験を積んでいく。